INVESTOR RELATIONS 事業等のリスク

(1)リスク管理体制

 当社グループは、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性のあるあらゆるリスクを的確に把握し、経営への影響を低減していくために、取締役会の諮問機関としてグループリスク管理委員会を設置しています。想定される各リスクを3つの主要リスク(経営・財務リスク、人事・労務・社会全般リスク、事業部門リスク)に分類、グループリスク検討小委員会を設置し、リスクの洗い出しと対策の立案を行ったうえで、グループリスク管理委員会がその内容について議論、検証を行っています。


<リスク管理体制図>


(2)リスク管理手法

 また、リスクの洗い出しと対策の立案については、以下の要領で実施しています。

  1. ①生成AIにより当社グループのリスク事象を抽出し、それを参考にリスクシナリオ(リスク事象が顕在化した場合の内容)を策定する。
  2. ②リスクシナリオに基づき、そのリスクが当社グループに与える影響を測定、評価する。
  3. ③評価の結果、重要度の高いリスク事象について、リスク管理策およびリスク管理計画を策定する。
  4. ④リスク管理策および管理計画の実績、進捗を確認、評価し、PDCAサイクルを構築する。

(3)重要なリスク

 当社グループの事業業績、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。なお、文中における将来に関する事項は、2025年3月31日現在において当社グループが判断したものです。

1. 市場環境の変化について

 社会課題である人材不足に対応するための業務効率化や、デジタルトランスフォーメーション(DX)関連のIT投資ニーズが堅調です。また、クラウドサービスや生成AI技術の進展により、国内でのデータセンター建設が加速していくと見られます。またサイバー攻撃が高度化するなど、セキュリティリスクも増大しています。

 その中で先端技術を活用した高付加価値分野への対応の遅れによる受注機会の逸失や競合他社に対する競争力の低下、また社会や経済情勢の変動による顧客企業のIT投資意欲の減退により、当社グループの経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 このような状況のなか、2025年4月1日に事業会社を統合し、グループ全体でのサービス提供の実現とシナジーの創出を図り、市場環境変化に対応しています。

 また当社グループは2026年3月期を初年度とする3か年の中期経営計画「Next 50 Episode Ⅲ “JUMP!!!”」を策定しました。人材不足の加速や、技術進歩により業界の在り方が変化するなかで、当社の事業を担う「人材」の価値をこれまで以上に高め、収益力・成長性の高いビジネスモデルへの変革を図ります。

2. 企業買収について

 当社グループは、M&Aによる事業の拡大を経営戦略のひとつとしています。しかしながら、市場環境の変化や不測の事態により、事業が計画どおりに進まない場合や、当初予定していた効果を得ることができない場合に、のれんの減損処理や関係会社株式の評価損を行う必要が生じる等、当社グループの経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループは、それらを実施する場合には、対象企業の財務や税務、法務等について会計士や弁護士等の専門家によるデューディリジェンスを行うことにより、事前にリスクを回避するように努めています。また、実施後は出資先の取締役会等への陪席、または決算資料等の精査により、経営状況を定期的にモニタリングし、当社グループの経営成績および財政状態への影響の把握に努めています。

3. グローバル事業について

 当社グループは、事業戦略の一環として、中国、シンガポール、ミャンマー、米国、ヨーロッパを中心にグローバル事業を推進しています。しかしながら、グローバル経済や為替等の動向、取引をめぐる法規制、商習慣の違い、政治的・社会的変動等のさまざまな要因が、当社グループの経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 各海外拠点の経営状況や外部環境の変化等については、グローバル統括部が中心となって適宜把握するとともに、個別のリスク事象についてはグループリスク管理委員会において内容の把握や状況確認、対策の進捗確認や効果検証を行い、リスク低減に取り組みます。

 なお、ミャンマーに関しては、不安定な政治情勢が長期化していることから、2023年3月31日をもって営業を終了いたしましたが、当社グループの業績に与える影響は軽微です。

4. 人材確保について

 当社グループは、最新技術への対応と顧客満足度向上のため、優秀な人材の確保と育成を重要視しています。人材の確保・育成が不十分な場合や、事業変革に伴うニーズに合った人材の補充ができない場合、経営成績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 国内外での新卒・中途採用を通じて付加価値の高い人材を確保し、入社後はテクニカルスキル・ヒューマンスキルトレーニングを継続的に実施しています。また、顧客ニーズの変化に対応するため、アップスキルのための人的資本投資も積極的に行っていきます。このような「キャリア啓発」をはじめ、自律志向の社員集団となりえる「企業文化」の醸成や「健康経営」を通じて、社員エンゲージメントの向上に注力することで、「お客さま満足度の向上」「生産性向上」に繋げ、それらがさらに「企業価値の向上」を実現する好循環を生み出すことを目指しています。

5. 情報管理について

 当社グループは、常に情報セキュリティの維持・向上を図り、お客さまに満足いただけるサービスの提供に努力しますが、万が一、不正アクセスや重大なエラー等により、取引に関する情報の紛失、改ざん、漏えい等を発生させた場合には、当社グループの信用は失墜し、経営成績および財政状態にも影響を及ぼす可能性があります。当社グループでは、個人情報をはじめとする情報資産を適切に取り扱うため「情報管理基本方針」、「プライバシーポリシー」等各種規程を整備しており、2022年4月施行の改正個人情報保護法にも対応済です。

 また、情報管理全般について組織横断的な対応、協議を行うため、情報管理統括責任者を中心とした管理体制を整備するとともに、サイバーセキュリティにかかる専門チーム(CSIRT)が中心となり各種セキュリティ対策の強化とインシデント発生時の対策に取り組んでいます。

 社員に対しては、定期的なサイバー攻撃対応演習の実施、法令に対応した規程改訂に関する教育を行い、コンプライアンス意識のさらなる向上に努めています。さらに、PマークおよびISO27001の認証を取得し、維持・継続しています。

6. サステナビリティについて

(a)気候変動について
 近年、世界的な気候変動により、地震・台風・洪水といった大規模な自然災害の発生頻度や影響度が高まっており、その対策として、企業に対する温室効果ガスの排出量削減に向けた取組みや、再生可能エネルギーの導入など「脱炭素社会」の実現に向けた対応が求められています。

 このような中、気候変動にたいする対応が不十分な場合、お取引先企業をはじめとする様々なステークホルダーからの評価の低下や事業機会の逸失など、当社グループの経営成績や財政状態に影響を生じる可能性があります。このため、当社グループでは気候関連財務情報開示タスクフォース(Task Force on Climate-related Financial Disclosures、TCFD)へ賛同やISO14001の認証取得により、環境に配慮した事業活動を推進しています。また、その取組みについては、一部ホームページで開示をしています。

(b)人権について
 近年、国際的な人権基準の強化をはじめ、人権尊重への取組みが一層強く求められています。

 このような中、人権尊重にたいする対応が不十分であることは、お取引先企業をはじめとする様々なステークホルダーからの評価の低下、事業機会の逸失、職場環境の悪化や社員の士気の低迷など、当社グループの経営成績や財政状態に影響を生じる可能性があります。

 このため、当社グループでは、人権に関する国際規範を尊重・支持し、『IDグループ人権方針』を定め、社員が事業活動において参照すべき行動を明確に示すとともに、規範遵守の企業風土の醸成を図っています。また、当社グループの業務に関わるビジネスパートナーに対しても、研修等をつうじ『IDグループ人権方針』の周知および遵守への働きかけを行うことで、人権に配慮した事業活動に努めています。

7. 自然災害・紛争・テロ・パンデミックレベルの感染症等について 

 地震・台風・洪水といった大規模な自然災害に関連するリスクは年々高まる中、世界各地で発生する紛争・テロやパンデミックレベルでの感染症等による被害は完全に回避できるものではなく、想定規模を超える被害発生時には、当社グループの経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループは、様々なイレギュラー事象が発生し、業務遂行が阻害されるような場合であっても、その影響を最小限に抑えるべく、危機管理マニュアルおよび業務継続計画(BCP)を制定しています。また、山陰BPOセンターに本社業務を一部移管しており、一極集中によるリスクの低減を図るとともに、テレワークをはじめとする働き方の多様化も引続き進めていきます。今後も食料・衛生用品の備蓄、各種マニュアルの見直しや安否確認システムを活用した定期的訓練の実施により、業務継続性確保に努めていきます。

8. ソフトウェア開発およびITインフラ業務遂行について

 当社グループにおけるソフトウェア開発およびITインフラ業務の売上比率は46.1%を占めています(2025年3月期)。高度化、複雑化、短納期化する当業務においては、開発途中での要件変更、品質の低下、納期遅延等の問題が発生した場合、プロジェクト完遂のための追加費用発生や損害賠償によって採算が悪化し、当社グループの経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループでは、これらのリスクをヘッジするために、ISO9001に準拠した品質マネジメントシステムを導入しています。新規大型案件の引合いを受けた際には受注検討会を開催し、取引方針、採算性、要員体制、技術対応力、技術蓄積の可能性等について経営的判断に基づく検討を行います。また、品質管理部門が各プロジェクトの提案、見積段階から納品に至るまでのプロセスをとおしたリスク分析・管理を実施し、プロジェクト遂行中のQCD(品質、コスト、納期)状況を定期的にレビューすることで、早期の異常検知につなげ、不採算案件の発生防止に努めています。

 また、今後増加が期待される複数のサービス部門にまたがる部門横断型プロジェクトや一括受託型の大型案件に対応するべく、社内のプロジェクト管理方法の見直しや管理会計等の社内システム改革に取り組み、タイムリーかつ正確なプロジェクト管理を実現します。

9. システムマネジメント業務遂行について

 当社グループにおけるシステムマネジメントの売上比率は41.6%を占めています(2025年3月期)。システムマネジメント業務において、誤操作等によるシステム障害や情報提供の遅延等を発生させる可能性は、皆無ではありません。大規模なシステム障害等を発生させた場合、損害賠償に発展することによって、当社グループの経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループでは、このような障害を未然に防止するため、「影響度の高い業務の再鑑体制徹底」、「ツールによる自動化推進」等を実施しています。また、品質管理部門を設け、「障害の未然防止研修」「障害要因分析・フィードバック」「現場立ち入り検査」等を企画実施しています。さらにISO9001認証を取得し、品質向上に向けた継続的改善を図っており、大規模なシステム障害は発生していません。

 さらに、当社グループのコアビジネスであるシステムマネジメント業務は、DXが推進され、既存システムに対する保守費の削減、自動化、パブリッククラウドの利用、主要顧客に次世代システムへの移行やセンター集約も進み、大きな転換期を迎えており、従来の単純なオペレーション業務に限れば、規模が縮小する可能性があります。

 当社グループは、システムマネジメント業務の将来性を鑑みた業務の付加価値を高めるオペレーションの自動化や遠地でのリモート運用支援による効率化、自社開発したバーチャルなシステムオペレーションセンター(ID-VROP)の活用による多拠点運用など次世代型運用サービスを積極的に推進します。

10. パートナー会社からの要員調達について

 当社グループは、案件ニーズにマッチした人材の調達、および受注量増減に対して機動的に対応するため、パートナー会社からの要員調達についても積極的に進めています。しかしながら、市場の変化により計画を大きく超える受注量の増減が急激に起きた場合には要員調達の不調、または、要員リリースがタイムリーに行えないことによって、当社グループの経営成績および財政状況に影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループは、パートナー会社に対し定期的にパートナー会や勉強会を実施することにより、事業方針や案件情報、トラブル事例共有等の情報交換を密にし、コアパートナー会社との協力関係をさらに深め、一括案件受注体力があり品質管理が期待できる協業体制を構築し、品質の向上と要員の調達力向上に努めています。

 また、今後さらに需要が増加していくITインフラやサイバーセキュリティなど高度IT技術分野においては、当社グループの施策と人材育成方針等の情報を開示し、当社社員の育成とあわせてパートナー会社の技術者育成を支援することによって、高度技術人材の確保に努めています。